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創立20年を迎えて

無秩序なクリーチャー集団との出会い

僕が任天堂からクリーチャーズにやってきたのは1999年2月。最初は社長ではなくデジタルゲーム部門の開発部長としてでした。初めてこの会社に来たときの第一印象は、それこそ動物的というか、まさに“クリーチャー集団”でしたね(笑)。会社としての決まり切った社則も社会規範もないかのごとく、とても猥雑で、全員が好き勝手に何かを作っているような混沌状態です。しかしそこは、“何かを作りたい”というエネルギーに溢れた人たちが、それぞれ異なる技能を持って集まっている、自由で高度な発想を生み出すことのできる環境でもありました。
今でこそ多様性という考え方が世間に浸透していますが、クリーチャーズはその誕生時から、さまざまな価値観や属性が融合し共存できるプラットフォームであったように思います。

2001年2月に社長に就任してからは、そのような状態を活かしつつ、さらに良いモノを作り出せる組織にすることに注力しました。せっかくのアイデアや技術も、製品にできないと意味がありません。商品化できる開発体制の整備と技術力の向上を図りつつ、より豊かな発想ができる現場作りを心がけました。社長をやっていると、よく周りの人から「どんな会社を目指しているのですか?」と訊かれることがあります。でも僕は、目標を決めてしまうと自分で自分の器を作ってしまう気がするので、あまり考えたくないんです(笑)。仮に目標があったとしても、さらにその上を狙ったり、あるいは的外れだけれど、とんでもなく面白いことを期待するようにしています。

そんないい加減な僕ですが(笑)、まず何よりも大切にしていることは、良いモノを作るために、作り手である我々が自分の生活を大切に生きる、ということです。
設立以来、クリーチャーズは一貫してエンターテインメントを軸足としたコンテンツを作り続けてきました。これは、誰かに喜びや夢を与えるサービス業であるとも言えます。
人が何かを楽しむとき、その“元”はすべてその人の生活の中にあります。目の前の仕事に没頭するだけではなく、仕事以外の趣味や楽しみを見つけたり、家族や友人や恋人と過ごす時間を大切にするなど、まずしっかりその時代を生き、“考える”姿勢が大事だと思います。あらゆる技術が日進月歩するめまぐるしい日々の中でも、その環境を受け入れ、自分自身の生活に正面から向き合っていれば、今の時代に必要なものや、人々の感性をゆさぶる何かを発見することができます。それは、かつて任天堂でエンジニアとしてファミコンゲームを作ったり、自ら作曲家として音楽活動をするなど、あらゆることに真剣に取り組んできた、僕自身の経験からも言えることです。生きていく中で“本質的な心地よさ”のようなものを、まず自分自身が感じ取る、それはモノを作る上でとても重要なことだと考えます。

ポケモンとクリーチャーズ

postimg_about01設立から今に至るまで、クリーチャーズが一貫して絶えず力を注ぎ続けてきたモノのひとつが、言わずと知れた「ポケットモンスター(以下ポケモン)」になります。
クリーチャーズは、ポケモンの原作権を保有するライセンサー3社のなかの1社として、ポケモンと深く関わりながら、ともに成長を続けてきました。古くは「ポケットピカチュウ」や「ポケモンスナップ」から、「ポケモンレンジャー」シリーズ、「ポケパーク」シリーズなど多岐に渡るポケモンゲームを制作しています。さらに、それまで2D主導だった「ポケットモンスター」シリーズを、「ポケットモンスター X・Y」から3D展開する際に、クリーチャーズの3Dモデリング技術を寄与することができたのも、会社としての大きな喜びでした。

そんな3Dモデリングされたポケモンを用いたゲーム、さらにはそのサービスの可能性や広がりに関しては、今後社内のゲーム開発において、とても重要な課題のひとつになっていくはずです。スマートフォンの普及により、ゲームの質、さらに言えば人々の生活の質が変化している昨今、それらの分野での新たな挑戦に果敢に取り組んでいきたいと考えています。
また、1996年の「ポケモンカードゲーム」の発売当初から、クリーチャーズはそのすべてを独自開発してきました。ポケモンの世界を踏襲しながら、ゲームソフトとは違う「もうひとつのポケモン」の世界を、カードゲームというアナログの世界で作りあげてきた実績があります。
これらのクリーチャーズとしてのクリエイティブワークは、ポケモンの新たな価値観を生み出す一助になったと自負していますが、僕自身、TVアニメ「ポケットモンスター」の主題歌を手がけるなど、作曲家としてもポケモンと深く関わり続けています。
“大人なのにポケモン?”と思われるかもしれませんが(笑)、我々は絶えず未来のポケモンのことを考えています。これからも、ポケモンと、ポケモンを楽しんでくれる方々のために、自分たちが何をできるのかを、さらに自分たちにしかできないことは何なのかを、今後もクリーチャーズは模索し続けていきます。

これからのモノ作りの現場で求められるもの

現在のエンターテインメントコンテンツを取り巻く環境の変化はめまぐるしく、それらが今後どのような進化を遂げていくのかは果てしなく未知数です。このような環境においては、たゆまぬ技術研究が不可欠ですが、にも関わらず失敗に終わってしまったプロジェクトも数えきれません。
しかしだからこそ、失敗と研究を繰り返すことのできる開発環境と、失敗からも何かを生み出せる発想の場を整備することが大切だと、クリーチャーズは考えます。
従来より特に念頭に置いているのが、新しい時代を切り拓く若いクリエイターが活躍できる環境作りです。若い力がきっと次のイノベーションを生み出してくれると期待し、最大限のバックアップをすることで、これまでとは違った新たな開発体制を作り上げていきます。
そんな新たな環境においては、従来とは異なる、複数の職能スキルを有するスタッフたちの参加が必要不可欠です。たとえば、プログラマーでありながらCGアーティストとしても優秀であるとか、音楽が専門だけれどプログラムも組める、というような人たちです。そのようなスタッフ同士がお互いを刺激し合い、そこに化学反応が起きることで、新たな作品を生み出す確率がほんの僅かでも増えてくれたら嬉しいですね。