PRODUSER INTERVIEWプロデューサー インタビュー

『名探偵ピカチュウ』の完全完結編開発へ

『名探偵ピカチュウ』は、かわいらしいピカチュウが名探偵で、実はおじさんだったら?
という発想から生まれたゲームです。
第一弾となる「名探偵ピカチュウ 〜新コンビ誕生〜」は、
2016年に配信限定タイトルとして発売されました。
2018年に3DSパッケージ版『名探偵ピカチュウ』を発売、
2019年にはゲームの世界を飛び出し、ハリウッド映画として
世界中のスクリーンに探偵帽を被ったピカチュウが映し出されました。
本タイトルの生みの親であり、
完全完結編でもプロデューサー/シナリオディレクターを務める
株式会社 クリーチャーズ 取締役 陣内弘之に、
『名探偵ピカチュウ』の誕生から、映画への関わり、
そして、完全完結編に向けての想いを聞きました。

株式会社 クリーチャーズ 取締役
『名探偵ピカチュウ』
プロデューサー/シナリオディレクター
陣内 弘之HIROYUKI JINNAI

ピカチュウ

『名探偵ピカチュウ』を開発した経緯をお聞かせください

今から5~6年前、本作(=3DS版『名探偵ピカチュウ』)の企画が生まれる前、柳沢(柳沢康敬・本作ムービー・ディレクター)が空いている時間を使ってショートムービーをつくっていました。別に「仕事」というわけではなく。
内容は、ピカチュウがリュックを背負って、1匹でアメリカ風の街や荒野を放浪するものです。実写の世界をCGのピカチュウがヒッチハイクしながら旅をしていく非常に叙情的な映像です。もちろんピカチュウはそこではしゃべったりはしないのですが、だからこそ非常に観た人の感情を動かす映像になっていました。

その映像は石原さん(石原恒和、株式会社ポケモン代表取締役代表、本作エグゼクティブ・プロデューサー)や株式会社ポケモンの関係者の方も観ていただいています。その映像を観た私は、「この映像の世界の先に『なにか』があるんだけど、それはなんだろう?」とモヤモヤした気持ちをずっと抱えることになりました。結局その時の私が感じた『なにか』の答えが『名探偵ピカチュウ』になっていきました。

開発のきっかけに、もうひとつ理屈をつけるなら、非常に個人的な理由が挙げられます。

『名探偵ピカチュウ』の企画を立ち上げる前から、私は犬を飼うようになっていました。初めての犬との生活は毎日が新鮮で、食事や散歩の反応も、ボール遊びも、毎日生活を続けるうちに少しずつ交流が深まることも、非常に楽しかった。

次の企画は何がいいかなあ、と考えて愛犬と公園を散歩していたときに『名探偵ピカチュウ』というタイトルが降ってきました。

犬というのは、外に出ると色んなものに興味を持ちますよね。電柱を嗅ぎ、草むらに鼻を突っ込み、公園のスズメやハトに近づき、犬同士出会っても常に忙しい。特に犬は人間の数十倍と言われている嗅覚を使って、身の回りにある情報を分析・確認していて、その姿が「探偵」のように見えたんですね。特にうちのはミニチュア・シュナウザーという、一見哲学者風な風貌をしている犬なので余計そう見えたのかもしれませんが、その光景からゲームタイトルが浮かびました。

その頃からずっとピカチュウのゲームを作りたいと考えていましたので、「探偵」と「ピカチュウ」という言葉がすぐに結びつきました。そしてポケモン派生ソフトで他社が手をつけていないゲームジャンル「アドベンチャー」で行く、というところまで、一気につながりました。
『名探偵ピカチュウ』は、柳沢がつくった映像のイメージがまずあり、そこに私の理屈がくっついて、タネが出来上がったと言っていいと思います。

ミニチュア・シュナウザー

ピカチュウをなぜしゃべらせようと考えたのですか?

石原さんからは、本作においては、ビジュアルも含めて「ピカチュウのイメージを変えていく」というお題をもらっていました。
ピカチュウのイメージを変えるという意味で、ドラマの中で言葉をしゃべるというのはかなり早い段階で決めていました。『名探偵ピカチュウ』は、アドベンチャーゲームの主役なので、しゃべってもらう方が都合が良いということも考えていました。

私はクリーチャーズ社員として、1996年のGB版「ポケットモンスター赤・緑」、そこからはじまるテレビアニメや劇場版などの立ち上げに関わらせてもらっていました(2007年まで株式会社ポケモン兼務)。
テレビアニメ立ち上げの制作会議では、アニメ制作スタッフの方の意見として、主役であるピカチュウとサトシとの交流の表現を深めるため、さらに物語の推進力としての役割を果たしてもらうため、いつかはピカチュウにしゃべらせたいという話が出ていたことを記憶しています。
ピカチュウやそれ以外のポケモンにしゃべってもらうため、テレビアニメ制作の方々は多くの試行錯誤をされたわけですが、いくつかの例外を除いて結局テレビアニメの世界でポケモンが言葉をしゃべるということにはならなかったわけです。
そうした経緯を知っているので、ピカチュウに言葉を喋ってもらう設定については、宮下(宮下尚生・本作ディレクター)をはじめとしてシナリオとドラマを担当したスタッフ全員に慎重に積み重ねてもらいました。

ピカチュウ高笑い

ピカチュウ高笑い

映像化についてはいつ頃から意識されたのでしょうか?

開発のきっかけが柳沢の映像であったこともあり、当初から映像化を意識していました。
「名探偵〜」の企画を練っていた当時でも、すでにテレビアニメシリーズは15年以上続いており、サトシとピカチュウの関係性は世界中で支持され、今後もずっと彼らが中心となる物語を映していくという流れにありました。
映像作品における「ポケモンのメインカメラ」は今までも、そしてこれからもサトシとピカチュウの物語に焦点を当てていくものと思いますが、15年を過ぎてそれが完全に揺るぎなく定着したこの時点であれば、もうひとつの物語を映す「別のカメラ」があっても良いのではないか、と考えました。そのもうひとつのカメラに、父親を探すティムと探偵ピカチュウの新しい物語を映してもらおうと考えていたのです。

当初の目論見は、メインのテレビアニメシリーズは毎週放映されていて、それを楽しみにご覧になっている方がたくさんいるわけですから、もちろん邪魔にならないように、たとえば夜のちょっと深い時間に尺は短くてもいいので、どこかで放映してくれたらありがたいなあ、と考えていました。そして『名探偵ピカチュウ』の新しい映像が20年経ったポケモンの世界をさらに拡げることになることを期待していました。

そのため、ゲームでは映像化しやすい設定・プロットを特に心がけていたのです。その後、石原さんから、私の希望の斜め上どころではない、予想をはるかに超えた、ハリウッドでの映像化(!)という話をいただきました。

名探偵ピカチュウ

映画化に対してのクリーチャーズの関わりはどのようなものだったのでしょうか?

一番重要な役割を果たしたのはCGスタジオの氏家(氏家淳子 取締役 ポケモンCGスタジオ部門担当)です。映画に登場するポケモンモデルの監修が彼女の仕事でした。

クリーチャーズのCGスタジオはゲームフリークさんの本編ゲームに登場するポケモンのモデルやモーションを制作しており、それ以外にもポケモンGOをはじめとする多くの派生ソフトに対してモデルを制作し、供給するという役割も持っています。
ポケモンのオリジナル世界観を守り、一方で新しく作られる派生ソフトの世界観も理解して、ポケモンの見た目のあり方の方向性を確定して、ゲームフリークさんの最終判断を仰ぐことが氏家の役割でしたが、今回の相手は海外のCGプロダクションであり、つくるのは先方です。まったく今までとは勝手が違ったようで、海外での打ち合わせも多く、文化の違い、ポケモンに対する認識の違いもあって、はたから見ていても大変そうでした。ただ担当した氏家はハードながらも、非常に楽しくやりがいのある仕事だったと言っています。
映画のピカチュウが最終的にあの形状になるまでに長期にわたって多くのやりとりがありましたが、結果的にロブ・レターマン監督をはじめとする映画制作サイドとポケモン原作サイド両者が納得するルックに落ち着いたのは氏家と担当したCGスタジオのスタッフたちのおかげでもあります。身内を褒めるのもどうかと思いますが(笑)。
もちろん、杉森さんを筆頭にゲームフリークで監修をしてくださった皆さん、株式会社ポケモンの映画担当及び監修担当の皆さんのご尽力は、なくてはならないものでした。

設定やシナリオに関してはどう関わったのでしょうか?

映画のプロット制作は2016年の春ごろにスタートしたと記憶しています。
ゲームのシナリオプロットや登場人物設定、時系列の年表などを英訳してもらい、ロブ監督と映画プロデューサーの前で説明しました。その年の夏頃、シナリオに関しては、株式会社ポケモンの映画担当チームがレジェンダリーの本社があるロスアンゼルスへ合宿に行って映画のプロットの作成に入りました。私は当時ゲームの制作があったので、東京にいたままメールで質疑応答をしたことを覚えています。
時差があることが逆にお互い無駄のない進行になりました。
映画ではこういう話にしようと思うが、ゲームサイドはどう思うか、ティムはこういう性格にするつもりだが、ゲームとの違和感がないか等、彼らの、その日の打ち合わせの一旦の結論が和訳されて、こちらの午前中にメールで来るんですね。
彼らの膨大な量の質問に、こちらで夕方までかかって返事を書いて送ると、ロスでは出社時間に私のメールが英訳されて彼らの目に留まる、そこから彼らの打ち合わせが始まり夕方(ロス)彼らのその日の結論が和訳されて午前中(東京)私に届く、というような、やりとりを1週間くらい続けた記憶があります。

ゲームと映画の設定には微妙な違いがありますが、これについては?

ピカチュウをはじめとする物語の根幹となる設定についてはほぼすべて取り込んでもらっています。ただし、映画の『名探偵ピカチュウ』はロブ監督のもので、監督の表現したいテーマがありました。表現したいテーマのために設定が変更されるのは当然です。映画という違うメディアで、ゲームの設定をすべてトレースしても面白いものにはならないということは理解していましたし、監督のクリエイティブを阻害するような意見出しはしてはいけないと思っていたので、よっぽど気になったものについては、意見は言いますが、ロブ監督のつくりたいものをもちろん尊重する、というスタンスでいました。

シナリオに対して変更要請はされたのですか?

いくつかの変更要請については、反映していただいたものもあり、されなかったものもあります。
反映した例ですが、初期のシナリオではハイハットカフェのウェイトレスはルンパッパではなかったんですね。ゲーム原作者としてはそれが気になって(笑)。ハイハットカフェは原作ゲームにも登場する主人公のベースとなる、ある意味重要な場所です。ゲームを遊んでいただいた方のためには、できるだけポケモンを変えたくない。「ルンパッパにしてくれない?」と頼みましたが、それに関してはすんなり変更してもらいましたね。映画本編や予告でルンパッパが映ると、出演できてよかったなあ……って思いますね(笑)。多分、ルンパッパって形状的にCGでつくるのが大変そうじゃないですか。だからとりあえず初期のシナリオでは違うポケモンにしていたのかもしれないですね。
また、これは別の話ですが、初期のシナリオでは「廃墟にポケモンが登場する……」と書いてあったのです。それは原作ゲームだとフーディンの役回りなのですが、映画ではバリヤードだったんですね。これは直接お会いしての打ち合わせの席だったと思いますが、「ここで登場するのはバリヤードでいいの? なんでバリヤードなの?」と確認したら、ロブさんは「ここはバリヤード。バリヤードを出したい」とキリっとした強めの表情でおっしゃっていて、「おお……そうスか……」と思って引き下がりました。そのときバリヤードである理由はまったく語られなかったわけですが(笑)。
映画を観た方はわかると思いますが、監督のバリヤード愛が弾けていましたよね。あのロブさんの表情の意味がこれだったのか、と完成試写の段階で理解できましたね。そういう経験も非常に楽しかったです。
映画についてのシナリオや設定周りの話は他にもたくさんありますが(笑)、まだ原作のゲームが完結していないので、今はこれ以上の話は言えません。

Switch版『名探偵ピカチュウ』完全完結編への想いをお聞かせください

現在、前作のスタッフに新しいスタッフを加えて鋭意製作しています。
映画は原作ゲームの設定をベースとして、100分という時間の中で物語の起伏を見事に描いてくれました。ピカチュウをはじめとするポケモンたちのCG表現も素晴らしいもので、ゲーム制作スタッフは映画に非常に大きな刺激を受けました。
しかし、ゲームの楽しまれ方は映画とは違います。ゲームならではの楽しみとは何か、それをしっかりと考えて、ゲームならではの映像、遊び、シナリオをつくっている最中です。そして原作ストーリーの完結編では、映画に引けを取らない感動が味わえるはずです。
映画で初めて『名探偵ピカチュウ』を知っていただいたお客さんにも、前作の3DS版を遊んでいただいたお客さんにも、納得できるストーリーと謎解きを詰め込んで、原作としての完結編を多くの方々に楽しんでもらうつもりでおります。

今回の募集、どういうスタッフに来てもらいたいですか?

クリーチャーズはカードゲーム制作の会社であることが知られていると思いますが、他にもポケモンCGスタジオとデジタルゲーム制作という2つのセクションがあります。CGスタジオのメインの仕事内容については、前述した通りです。CGスタジオのスタッフは本作についても、メンバーとして参加してもらったり、モデルを提供してもらったりしています。
デジタルゲーム制作は、ポケモン原作会社の一社として、制作する作品を通じてポケモンの世界を拡げたり、深めたりすることも重要な仕事のひとつと考えています。今まで開発した作品には、「ポケモンレンジャーシリーズ」「ポケパークシリーズ」などがあります。そしてこの延長線上にあるのが『名探偵ピカチュウ』です。

ポケモンレンジャー&ポケモンパークシリーズ

こうしたクリーチャーズの状況や考え方を知っていただいた上で、クリーチャーズの社員になりたい、Switch版『名探偵ピカチュウ』の制作に参加したいと思われた方すべてが今回の募集対象です。
ポケモンが詳しくない人でも大歓迎です。詳しくないけどなんか面白そう、で全然大丈夫です。
ポケモンの原作会社の一社として、スタッフはポケモンの世界をさらに豊かに拡げるゲームを作るように心がけています。それを実現するための高い技術を持っている方、高い熱量を持っている方が優先されることは間違いありません。そして、これもあたりまえのことではあるのですが、自分が面白いと思ったものを他の人にも伝えられて、他の人が面白いと思ったものに対しても聞く耳を持ち、最終的に、まわりのスタッフと協力して、ものづくりができる方に来ていただきたいと思っています。

どうぞよろしくお願いいたします。